応援日和 / 567

    きのう(23日)は、五月晴れを先取りしたような爽やかな一日だった。待ちに待ったと言おうか、毎度ながら半分愉しく、半分気が重い、娘が3000メートルに出場する陸上競技大会が開かれた。会場は、京王線南大沢駅から私の足で20分ぐらいのところにある八王子市の上柚木公園陸上競技場。ただ、きのうは脊柱管狭窄症が酷くて10メートルごとに立ち止まっては、腰をかがめたり、うずくまったりしたので、倍以上時間がかかってしまった。

    競技場までは、360度オールグリーンといって良いほど新緑に溢れていて、それだけでも遠路はるばる来た甲斐がある。開発前は、果てしなく森が広がっていたのだろうと想像させる。

  ここに私の盟友だった故・伏見俊之、通称フーちゃんの自宅マンションがある。最期に訪れたのが彼の突然死のときだった。司法クラブの仲間だったN野谷公一君から電話をもらい、最初に八王子の警察署に駆けつけた。そのあと司法解剖か検視かで慈恵医大病院の分院についていった。マンションに彼を連れて帰ってからは、添い寝してずっと一緒に過ごした日々の思い出を語った。そのあと四ッ谷の葬儀場に運ぶのに、マンションの階段が狭くて苦労した。「私が背負いましょうか」と言ったら葬儀社のスタッフが吃驚して・・・等々の話を、毎回この道を通りながら家人に語りかけるのが倣いになっている。今回も黙って聞いていてくれる。

  八王子市立愛宕小学校のキャンパスを右に見ながら、小径を進んでいくと歓声がだんだん近づいてくる。大きな歩道橋を渡ると眼下に競技会場が飛び込んでくる。競技会場のゲート近くで、早くも出走の準備をしていた娘達のグループに遭遇。みんなに挨拶できて、これで「お父ちゃんもお母さんも来てたよ」と強く印象づけることが出来た。

          

    スタンドは鈴なり状態で、立錐の余地もない。人の波をかき分けながらずんずん西の方に進んでいくと、男性の声で「小俣先生、小俣先生」と呼び止められる。「あぁY萩さんだ」手招きしてくれるので、家人と私はうまく彼の隣に座ることが出来た。Y萩さんは前に勤めていたT京都市大学の事務課長で、長女の史歩ちゃんが高校時代は、都代表として全国女子駅伝大会に何度も出場し、いまもD東文化大学で活躍している。高校3年生の長男も都を代表する選手だ。 Y萩さんとは、たびたび競技場で会うので、大学で一番仲の良い同僚になった。昼食の時は学生食堂で一緒に食べながら、娘たちの競技談義しては2人で盛りがあった。

  出走は午後2時5分の予定だったが、前の競技が長引いていて実際には40分頃になった。その間、史歩ちゃんの高校時代の3000メートルのタイムを訊くと、9分15秒だという。娘は10分の後半くらい。31人走って8位以内が都大会に出場できる。いつも9位か10位で「あと少し・・・」が、「まだまだがんばる・・・」と、競技を続けるエネルギーの源になっている。

    以前にも書いたけれど、左足を故障していて先月の大会は出場を見送ったから、リベンジの意味もある。だが前日もハリとスポーツ整体に行っていたくらいだから、何も言わないが、不安だろう。Y萩さんにその話をすると、息子さんも足を痛めて、なかなか記録が伸びなかったが、回復してからは、その分タイムを出せたという。昨日は軽く都大会出場を決めたようだ。

  ピストル音がする。400メートルのトラック7周半。いきなり色白の大柄な選手が、カモシカのように脚を大きく開きながら、軽い足取りでぐんぐん差を広げていく。まるで雲の上を飛んでいるような。娘は中央より前の第2グループ、7〜8位ぐらいの所。このまま行けばいいが・・・と祈りながら、目の前を通り過ぎるとき思わず「杏香ガンバレ!!もう一息!!」と叫んでしまう。

  あと200メートル。顔は見えないがスピードはかなり落ちてきた。このまま逃げ切れば都大会だと思っていると、向こう正面で、抜かれた。あぁ・・・力尽きたのかゴール前でも2人に抜かれ、10位か11位、いつものパターンだ。さてどう慰めるかは、帰ってから考えよう・・Y萩さん一家にお礼を言って、そそくさと引き上げる。

    橋本駅ビルにある寿司屋「魚常」で遅い昼食をとる。ここは魚が新鮮で、高級魚を置いていない分とにかく安い。入るなり「ひさしぶりですね」と声をかけられ、奥から店長も出てきて挨拶をする。C央大学に講義に行っているとき、毎週帰りはここで、昼間から一杯やりながら刺身をつまみ、握りを腹一杯食べて引き上げるのが常態化していた。

   家人はこのあと歌舞伎に行くのでビールを一杯。さっそく握りを注文している。私はいつものように角ハイボール。握りはあとに頼むとして、まずはバイ貝の煮付け、なまこ、卵焼き、刺身で一杯。グラスを傾けながら、がっかりしているだろう娘の顔を思い浮かべる。

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