介護の愉しみ(1294)

グループホームに行きはじめてから1ヶ月半になると入居者全員と仲良くなる。「本当に認知症なの?」と6人中5人については❓❓❓と思える節がある。Oさんは85歳。他の介護の人の名前は覚えていないけれど、私だけ「一平さん、69歳」と大きい声で言う。その上で「若い〜」と。なんだか嬉しいやら恥ずかしいやら。この前見学で来ていた女性のS木さんがそれを聞いて、顔を俯かせてひくひく笑っていた。一番認知症が重いFさんは、言葉を発することがほとんどできないが、最近私と目が合うと「トイレ」と教えてくれるようになった。認知症の人たちとどう向き合うのか、三好春樹さんの本を読んでみよう。

<この本の参考文献に、吉本隆明さんの『心的現象論序説』や『母型論』が>

きのう(4月12日)は93歳のA子さんのシャワー浴を担当した。彼女は地元ではかなりの著名人だ。職業を書くとすぐ誰だか分かってしまうので、そこは想像で読んでもらうしかない。戦前の大学卒だから、なかなかのインテリで、裕福な環境で育ったらしい。認知症だが、ある時間、記憶が繋がるというか意識が覚醒する。その時のやりとりが愉しい。

1日1200ccを目安に「麦茶を飲んでね」「ポカリを飲みましょう」と声かけやお願いをすると、「いや」という。それも数パターンあって、からかうように甘えん坊っぽく言うときもあれば、本気で「嫌」と拒絶する時もある。その都度、笑い方がニヤリだったり、ニッコリだったりして可愛い。

このところ3回続けて彼女の入浴というかシャワー浴をした。というより、だんだん私がやるのが当たり前になってきたような❓全く歩けない、歩こうとしない高齢者を車椅子から浴室のイスに移動させるだけでも大変で、面倒と思えば確かに面倒だ。A子さんに限らず、入浴後の顔をみているとどの人も穏やかな好い表情をしていて、「気持ち良かった」と言ってくれるのが励みになる。

<柔道整体師が使っているというので買った>

A子さんの場合は、全神経を腰と膝に集中させる。転ばせたら一巻の終わりだから。そのために大きな腰痛防止ベルトと踏ん張りが効く膝当てサポーターを買った。私は何でも「3日、3月、3年」と考えているので、3ヶ月いや3年以上ヤル気の証だ。記者でも同じポジションを3年やって、初めて1人前と認められる。アレだな。

4日も風呂に入っていないA子さんなので、休みだった昨日からすでに「明日はA子さんのシャワー浴だな」と覚悟していた。愉快だった。入浴前の体温、バイタルは正常なので、予定通り午後2時を前に、彼女のバスタオルやフェイスタオル、アカスリ、シャンプー、保湿液、上着と下着、リハパンと略されるリハビリパンツ(これはジャパンナレッジ に説明が無い。仕方がないのでGoogle先生に訊いてみたら、以下の通り。<トイレにいける方のために、上げ下げするだけで簡単に着脱できるおむつです。 トイレの失敗を恐れて外出を止めたり、生活意欲を失ったりすることは良くありませんし、活動量が減ることで身体の機能を衰えさせてしまうことも考えられます>とだけある。後段の内容では、このリハパンだと自由が効くから利用者に良いということなのだろう。それにしてもせっかくニチイ学館で買った『介護のための用語辞典』だが、この言葉は掲載されていない) を揃えた。

<これまでも何度か使ったが、ヤクタ(役に立たない)の用語辞典>

「さぁお風呂に行きましょう」とA子さんの車イスを動かそうとすると、「イヤ、いや、嫌」と拒否権発動。あちゃー🤷‍♀️🤷‍♂️🤷‍♂️。「もう4日も入ってないんだから」と優しく語りかけても通用しない。何度か繰り返していも埒があかない。そのうち「頭が痛い」と駄々をこねる。これは幼児とおんなじ。こんなこと初めてなので、サァーどうする😨😨😨。

すると相方のキャインさんが、「頭を洗うとお湯で血の巡りが良くなるから痛いのも治るって、入って、入って」と車イスを押し始めた。さすがベテラン。そこからはまた私の番。A子さんは怒ったまんまで浴室へ。そこで私が訊く。「まだ怒っているの❓」「うん😃😍☺️」しばらくして「めんど臭いでしょ」と🤣🤣笑う。こんな時は意識が覚醒されたときで可愛い。

まず顔を石鹸をつけた柔らかい素材のハンドタオルで洗う。お湯に浸したフェイスタオルで顔を拭いてあげると一気に目覚めた。肩から腰からお尻から足の爪先まで綺麗に2回洗う。動かなくても、90過ぎても人間の新陳代謝は凄い。さらに頭を2回シャンプーして、最後は全身をシャワーで流す。別の乾いたフェイスタオルで頭を拭き、事前に浴用イスに敷いたバスタオルで身体全体を包み込む。仕上げは肌が乾燥しないようにニベアのような保湿液を塗ってひとまずシャワー浴は終わりだ。

浴室と洗面所とでは温度差があるので、浴室内で上だけ着替えさせる。この時点で私は頭のてっぺんから汗が噴き出る。汗が目に入って痛い。初めて”三助”の大変さがよくわかる。それから、かがみ込んで両脚を10分余り揉んであげる。寝ているとき以外は車イス生活なので足元が鬱血している。ほぐしてあげると目を細めるので「気持ちいい❓」と声をかけると「うん😃😂😊😆」とこれまた嬉しそうにニンマリ。こんな時自分も幸せに感じる。

<ハナミズキが至るところ満開 英語でDogwoodっていうの知ってた❓>

入浴と着替えで40分ちょっと。A子さんが使ったバスタオルを借用して足元を拭き、リビングに連れていくと、3時のおやつに間に合った。この後私は取って返して浴室掃除15分ほど。ほぼ1時間仕事だ。ここで油断すると後でチェックに来る(であろう)キャインさんに、「浴室に毛が残っていた」とか「シャンプーや乳液が元のところに置いてない」とかクレイムが付くから念を入れる。私は全身ずぶ濡れなので、パンツまで全て着替える。”三助”があるB勤務の日だけでなく、いつタマが飛んできてもいいように着替えのフルセットは常備している。こんなことやっていると、だんだん人間が出来てくるわぁ〜。今更遅いけど。社会人になる前に、これをやっていれば、まともな記者になれていたかもしれない。

この1ヶ月半、A子さんが覚醒したときに私に問わず語りに話したことは、「子供の頃は可愛くなかった」そうで、「勉強が出来ないのが悔しくて泣いていた。妹も同じ仕事だけど(妹は)頭が良くてアメリカに留学した」と。「ラーメンが好きで、家の近くにあったあの店が懐かしい」と聞いたことのない地域を名指しするので、Google先生に訊くと、あるある。しかも10年ほど前になくなったその店の逸話も出ていたから、地域では知られた街中華だったのかも。

もちろんこれらは、スラスラ話したわけではない。点と点を繋ぎ、線にして、やっと分かった。何だか特捜検事と、分かったような分からないよな質問とヒントの応酬というか禅問答の挙句、事件の筋を読むような、懐かしい感覚が蘇る。とにかく疲れるけれど楽しくて、帰るときにはいつも、やって良かったと満足感に浸ることが出来る。

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