開高健ノンフィクション賞を受賞したS賀旭さん(1686)

教員冥利に尽きるというほど大袈裟ではないが、とても嬉しいのは教え子がメディアに就職したり、ノンフィクションライターとして独り立ちしたときだ。それも何がしかの賞の最終候補にノミネートされたり、受賞したときは自分のこと以上に、私は受賞とは無縁だが、感激する。

今日11月25日は、早稲田大学大学院の教え子S賀旭さんの「開高健ノンフィクション賞」の受賞パーティーが帝国ホテルであり、招待されたので枯れ木も山の賑わいと出席した。今回の受賞作品『虚ろな革命家たち』のベースになったのが、修士時代に提出した連合赤軍についてのルポルタージュで、授業中に何度か浅間山荘周辺を取材で回った話をしていた。非常にシャイな学生だったからメディアは無理かと思い、「作家になったらいい」と勧めたが、キチンと日刊現代に就職し、今は週刊朝日の記者をしている。

久しぶりに会ったS賀さんは、学生時代と変わらず少年がスーツを着ているように見えた。しっかり者の女性編集者が担当だったので、いい人に巡り会えたと喜んでいる。「大集英社で賞を取った以上、キチンと仕事を続けていれば食いっぱぐれはないから」とお祝いの言葉をかけた。

会場ではS賀さんの師匠に当たるM達也さんとY岡忍さんも駆けつけていて、Mさんとは喫煙所で挨拶方々、彼が大学院の授業の時にいつも明治大学時代のMさんの講義の話をしていたことを話した。森さんは、「そういう奴なんですよ」と困った笑いをしながら、教え子の受賞が嬉しそうだった。

Y岡さんとは旧知だったので、集英社に全く知り合いがいない私が、ひとりでぼんやり飲んでいるのを見て、気の毒に思ったのか声をかけてくれた。Y岡さんは日本ペンクラブの会長をしていたから、知り合いは大勢いるだろうに気を遣ってくれたのだろう。こういうときは助かる。その時、S賀さんが、私の授業に欠席する理由として、「今日はY岡先生の課題があって、今用賀に来ているので授業に出られません」というから「そりゃ俺の授業より重要だから気にしなくていい。出席にしておいてやるよ」と応じた話をしたら、彼特有の柔和な顔をクシャクシャにしながら笑っていた。この2人がいたから受賞にこぎつけたのだろう。

今年は東京経済大学大学院時代の教え子で週刊現代の記者をしているF岡雅さんが「本田靖春賞」の最終候補になり、彼ら2人がその後もルポやノンフィクションを書き続け、努力を重ねた結果が成果に繋がっていることが、とても頼もしく思っている。

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