小笠原 島便り2017 (18)単独世界一周7回のヨットマン / 620

おが丸が出て閑散としていると(17)で書いたばかりなのに、街が若者で賑わっている。何でだろう。昨日はにっぽん丸が沖に停泊していたが人影はまばらだった。それにひきかえ今日は、と気にしてもしょうがないので、快晴の下、電動自転車を借りて港の周辺やヨットハーバーを見て回ることにした。 

▼「あぁそうなんだ❗️」と合点がいったのは、二見港に停泊している大型船を見た瞬間だった。船に大きく「T海大学」と書かれている。船の名前は「望星丸」、そう言えば、T海大学の出版物で『望星』という雑誌がある。それにしても凄いなぁ。たしか海洋水産学部があるんだな。海の男や女を目指して入学したのなら、こうした実習航海は感動ものだろう。ちょうど一昨日行った水産センターでアカバの歯磨きをしていた3人組と話をすることができた。今朝9時ごろの入港で、明日の朝出航するという。実習は1年生からだが、駿河湾を回る程度で、3年生以上になると小笠原まで来られるとのことだ。 

▼探訪の途中、我が友<クロネコヤマト>の幟を見つけたので、中に入って見た。 宅急便を使えるのなら、これは楽勝だ。詳しく聞くと「出航日の前日に集配に回るので、そこで渡してもらえれば、自宅までお届けします」そうかじゃ逆もありだったんだと少し後悔。しかも「クロネコヤマトのメンバーなんですよ」と言ったら、「1日、2日遅くなっても構わないんでしたら、ヤマト便だと安くなりますよ」と親切に教えてくれた。もちろん是非。早かろうが遅かろうが、私を待っているのは、娘くらいなもんだ。 

▼ヨットハーバーの方に出ると70代くらいの男性が、帆をチェックしていた。白いヨットには<MINORU. SAITOH>の文字がみえる。この辺が記者なんだなぁ〜。背中を向けている男性に、「S藤さん!地元のヨットマンですか?」と声をかけると、振り返った顔は我が畏友・N田知佑さんに似ていた。まぁ逆光だから、カヌーイストもヨットマンも同じか。S藤さんは、今はオーストラリアに住んでいて、横浜にもいたことがあるという。「あぁ私は横浜から来たんですよ。妙蓮寺、菊名の隣の」つい取材の時の癖が出て、何でも接点を拡大する「一点突破全面展開」だ。

▼ S藤さんがヨットを始めたのは、30代だという。石油を扱う商売をしていて、お金が貯まったので、それを元に世界のヨットレースに出る様になったそうだ。何でもオーストラリアと日本の間だけでなく、これまでに単独で7回も世界一周したという。誠実な語り口から出る話の凄さ、大きさは、どうやら本当の様だ。「ヨットって凄い金持ちじゃないと出来ないんじゃ?」何でも疑問は駄目元で聞く。「うん、まぁそうかな。私は石油会社の役員をしていたり、少しばかり持っていた不動産を処分したんですよ」と屈託無く笑う。いいね、海の男の白い歯って。

▼ヨットの修理のため(6月)15日に入港して、2日前に出たけれど、今度は違う機材の調子が良くないので戻って来たそうだ。「馬鹿だから聞いちゃいますけど、やはり寂しくなることってないんですか?」「う・・・ん、レースだしね」と質問と答えがチグハグだったので、やはり俺はアホやと再認識して、それでその話はやめた。

S藤実さん、逆光ですみません。フラッシュはたいたのですがね。

▼話が面白いので、元社会部文化担当(スポーツか、この場合は)としては、再び自分に関連づけて訊いてしまう。「私の会社の先輩でヨット好きのY村秀実さんといって、映画監督のY村公三郎さんの息子さんがいるんですけど、知りません?」「レースに出るの?」「どうかな、湘南と大島の間はヨットで行き来しているみたいですけどね」ここでS藤さんニヤリと笑って、「私の名前出したら、ヨットマンなら知ってるはずですよ」そうか〜。とにかくナイスガイだった。 


▼S藤さんと別れて、まだ見ていない都立小笠原高校を目指す。いやぁ坂道が辛い。電動自転車だから登れる様なものを。それにしてもここまで高台にあれば、街を一望できて、さぞや好い気分だろう。素晴らしい環境の中にある。校門のところで思わず「小笠原の最高学府、名門小笠原高校❗️」と声に出してみた。後ろを通っていた奥さんが、「クフフ」と笑って、通り過ぎて行った。間違いはないはずなのに・・・? 教室までは行けなかったが、そっと裏庭まで行って街を見下ろした。S藤さんのヨットが見える。 せっかくこんな高台まで来たので、さらに奥まで行こうとすると校門のすぐ斜め前に<東京都教職員小笠原(父島)住宅>の大きな看板が目に入った。そうかさっき笑っていたのは、ここの先生か職員の奥さんなんだと納得。



▼山道を登りながら、こう考えた。「もうこんなことが出来るのは、今年が最後だろう」と。山の上から「釣浜」の海岸が見えるはずだ。それにしてもシンドイ。もうポロシャツも短パンもシャワーを浴びたようにずぶ濡れだ。冷凍室に入れて凍らせたお茶の大きなペットボトルが役に立つ。途中自転車を降りて、後は歩き。おお〜右は兄島、左は二見港、一度に見られる頂点にたどり着いた。石川五右衛門じゃないけれど、 絶景かな、絶景かな。

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