トキワ荘の食卓『中華料理 松葉』(1194)

帰りはマンガミュージアムから4〜5分椎名町方面に行ったところにある、漫画ファンなら誰でも知っている中華料理の『松葉』に37〜8年ぶりに入った。前回訪れたのは、トキワ荘解体の取材に行った帰りだったし、今年6月のプレオープンの後は、当時の記者仲間と寄ろうとしたら行列が出来ていたので諦めた。

正午前で店内はまだ4人の先客だけだったが、昼過ぎればドドと来ることが予想されたのでカウンター席にした。まず寺田ヒロオさんにちなんで、彼が発明したサイダーの焼酎割り「チューダー」とメンマ、焼き餃子を注文。やはりすぐ後に2人組、さらに3人組と入ってくるが、揃ってトキワ荘の住人が好んだ「ラーメンライス」「タンメン」「チャーハン」という声が背後から聞こえてくる。

37〜8年前の店はこんなに綺麗ではなかったように記憶する(今でも十分古いのだが。いやこの間、何百軒とラーメン屋さんに入っているので定かでない)。料理を作るのは、私と同年代の女性がただ1人。お運びと会計は若い女性。カウター越しに見ていると「こりゃ大変だわ」。私の前に頼んでいた客の餃子が焼き上がる。さらに「ラーメン2つ」と主人の大きな声が聞こえてくる。私のはまだまだ先だと察知したので、メンマだけをツマミにチューダーを飲む。しばらくして餃子が来た。「追加は早めに頼まなくっちゃ」と、ここはトキワ荘の住人に倣って、何も入れない「ラーメン」にした。

味⁉️それはみんなの家の近くにある、普通の中華料理店(最近流行の”街中華”)の、普通のラーメンである。たまたますぐ側に、腹をすかせた貧しく若い、食欲旺盛な漫画家たちが住むアパートがあり、何を食っても美味かったし、出前もしてくれたので身動きできない原稿締め切りの時は重要な兵站として機能していた。しかもここの漫画家たちの多くがその後、大成功を収め、世界的に有名になったばかりか、青春時代を漫画化し、そこに登場したことで、ファンたちに『聖地」として崇められた。それが「中華料理  松葉』だったというだけのことだ。

味わうのではなく、それぞれの青春時代のノスタルジアを食べていると思えば、来る価値があるかも。それに『トキワ荘』が無くなっても、今度は『トキワ荘マンガミュージアム』が出来て、見学者なら必ず寄ってみたいと思うはずだから、そういう点では「幸運の店」とも言える。ここで食べればご利益はあるかも。

そういえば、『松葉』のすぐ側に名前の無い(きっとあるのだろうけど、暖簾に店名が出ていない)とんかつ屋があって、その値段が驚愕。「ロース定食 520円」今どきこんな店あるの⁉️今度東長崎までまた来る、ことはないだろうけど、もし来たらここかな。

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