介護界のレジェンドに会う (1355)

M好春樹さんは、介護の世界では超有名人で、NHKにも出演しているのだが、私はこの世界に首を突っ込むまでは知っているようで、知らない存在だった。というのももう20年近く前、私が記者に比べるとかなり暇な職場に3年いたことがある。49歳から52歳の頃のことで、あんまり暇だから1日中ライブラリーのNHKのドキュメンタリーを片っ端から見たり、買ったままになっていた書籍の山を崩していった。

そんな頃読んだのが、吉本隆明さんの対談集『<老い>の現在進行形』だった。その対談相手が、今にして思えばM好さんだったのだが、特に介護に関心があった訳ではなく、ただ吉本さんの本だったから買って読んだという程度。

老いると実際の身体の急な変化に、身体のイメージがついていけないというようなことを吉本さんは話しておられた。その頃の私は、<老い>とはそんなもんかぐらいにしか捉えていなかった。という以上にそれほど、いや全くに近いほど関心がなかった。

ところが介護の世界に入ってみて、いろいろ調べていくと、かのM好さんは、数多の介護関係の書籍を出していて、それも思想的なものから技術的なことまでウイングが広いことが分かった。改めて読んでみると、全く思ってもみなかったこと、自分が体験から感じていることの様々な疑問や知りたかったことが、具体的事例を通して書かれていることに気付かされた。それから少しずつ彼の著作を読むようになった。

ひょんなことから知り合うきっかけが訪れたのは、昨日(7月24日)のことだ。「目黒の駒場苑で、親しい人たちと集まるので来ませんか」と声をかけてもらったので、「ハイ、はい」と二つ返事で駆けつけた。と言っても何の会合かも知らずに。

指定された駒場苑は、以前住んでいた代沢のすぐ近くにある特別養護老人ホーム、高齢者在宅サービスセンターで、介護の先進的なことで知られている。渋谷に近い、こんなところにあるのかぁ〜と広い敷地に入って驚いた。さらに印象的だったのは、ニコニコ笑いながら出てきた若い施設長で、初対面ながらとてもフランクで、ここにはこれまでにも何度か訪れたような気になった。早速「M好さんに誘われてきました、横浜の介護職員です」と挨拶すると、どうぞどうぞと招き入れてくれた。

待っているとすぐにM好さんと仲間の2人がやって来た。さらに施設から若いスタッフ2人も顔を出し、2階の大広間の様な場所に移動。ここで初めて、今日の目的は、介護技術のビデオを撮影することだと分かった。なるほど。かくして見学者となる。

「動きの生理学から学ぶ介護術」がこのビデオのタイトルで4章からなる。それを午前10時から午後3時ぐらいまでに撮影する予定だ。

この道47年、プロ中のプロだけに撮影中、淀みなく説明が流れる。駒場苑のU原さんをモデルに実際に介護の方法をやってみせる。見ているだけで、「あーそうなのかぁ」と相手の可動部を上手く使いながら寝返らせたり、起きあがらせたりする。

極めて順調で、昼を過ぎたものの、この際チョット休んで一気に撮り終わろうということになり、あれよ、あれよという間に予定の4章まで終わってしまった。そのため午後から来る予定のモデルの代わりに、何と私が「椅子からの立ち上がり介助」「入浴時の立ち上がり介助」の利用者役や介助者役をやることになった。

<左からM好さんの若い友人C田さん、M好さんの親友でモデル役をやるはずだったS浜さん、M好さん>

実際に体験してみると、「そうかぁ力を使わなくて、相手の反応を上手く利用すればこうも簡単に起き上がらせることが出来るのかぁ」と新米の私には目から鱗だった。4時間弱、集中講義を受けられて有意義だった

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