ゴールデンウイークにお薦めの「評伝 宮田 輝」 (1505)

ゴールデンウィーク中のお薦めの本を1冊。余計なお世話と笑われそうだが、このブログを読んでいる友人、知人100人なら、「またかぁ〜😅😅😅」と受け流してくれると思う。

その作品は、『評伝  宮田輝』(文藝春秋)。著者はNHKアナウンサーの古谷敏郎さん。フェアープレーを信条にしているので、先に書くと、古谷さんは、東京経済大学の後輩で、しかも数少ないNHKの後輩でもある。とは言っても、今は知らないけれど、私がNHKにいた頃は、毎年1〜2人ぐらいは入っていた。私が入局した1976年頃の社会部長は、故 土谷通幸さんという先輩だった。もちろん知り合いではない。当時は2学部しかなく1学年1000人程度の小さな大学だったのだから、古谷さんにとっても先輩の私は珍しい存在で、いつの頃からか親しくなった。後輩だからと言ってこの本を取り上げた訳ではない。いやチョットあるかも🤣🤣🤣。とにかく面白かった、という以上に愉しく読み進めた。

本書は、NHKアナウンサーの歴史を垣間見ながら、往年の名アナウンサーが次々と登場する列伝の様相も呈している。内容を書いてしまうとネタバレになってしまうが、我々の世代ならリアルタイムで観ていた「私の秘密」の高橋圭三さんとの馴れ初めや敗戦直後の物資のない時代、小さな子供がいる高橋宅を、粉ミルクやジャガイモなどを土産に訪ねていたといった話などは、あの時代を直接間接に見聞きしている我々世代には、単なる友情話ではなく、救世主的存在に映る。それだけに宮田さんの人柄を如実に物語っている。伝説の名アナウンサー和田信賢さんの「双葉山敗る」のエピソードやパリで客死した話など知らない事実と合わせて、瞠目する内容がふんだんに盛り込まれている。

後半は、アナウンサー時代とは異なるエポックが綴られていて、特に突然参議院選挙に出馬した前後についは、非常に興味深く、かつNHKにいた人間には、その時の情景が手に取るように分かって「うん、うん」と相槌を打ちなが読んだ。中でも参議院選挙に無所属で立候補しようとしていた宮田さんを、ニュースセンター次長(後の会長)だった島桂次さんが、田中角栄元総理の意向を受けて自民党から出るように説得する下では、島さんが当時の自分のことを、「影の政治顧問」と表現(『シマゲジ風雲録』文藝春秋からの引用)していたのが印象深かった。この本を読んだ直後は、私の友人の「顧問発言」が、問題視されていた時期と重なって、時の権力者と秀でた記者との関係はいつの時代も変わらないと改めて思った。

終始感じたことは、著者が先輩アナウンサーたちをとても尊敬しているだけでなく、愛情を持って見つめている点だ。宮田さんのことを終始「輝さん」と親しみを込めて表記しているところからも窺われた。決して好きではなかった宮田輝さんだったが、この本を読んで随分見方が変わった。『人は見た目が9割』(新潮新書)とは違う、数々の姿を知ることが出来た。

とにかくビックリするほど原資料に当たっていること、それを丁寧に読み込んでいること、取材先を実に巧みに、もちろん自然体で接しているのだが、いい意味で籠絡させる術に長けていることが、ページをめくるたびに感じられた。お世辞抜きで、読み応えのある優れたノンフィクションだった。面白すぎて一気に読めること請け合いだ。

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