小笠原 島便り2017 (24)父島の背骨を走破 (前編)/ 626

昨日(6月27日)の大神山一帯の登頂成功(大げさな)に気を良くして、何と今日は電動自転車で未走破の奥村地区(街の一番外れにある)から入って<夜明道路>を走破してみようと軽く考えていた。午前中は洗濯をしたり、生ゴミ(横浜では分別回収しているプラ類も父島では一緒にまとめて生ゴミとして出せる)を出すついでに部屋の掃除をしたり、「やすらぎの郷」を見ながら冷麦を食べたりして、タラタラ過ごす。実はiPhoneもiPadもバッテリーを充電する必要があったうえ、麦茶が凍りきれていなかったので、すぐには出られなかったのだ。


▼午後2時前、小笠原観光で、すっかり親しくなった電動自転車“赤べこ号”(横浜でも同じ名)を3時間(1600円)借りてスタート。奥村地区に出る途中には、以前大きなクス?の樹の下で昼寝をした、あの場所に通じる隧道があり、ここを抜けると大幅なショートカットになる。戦争中、防空壕として使われたという隧道の中は、外は30度近くもあるのに、ヒンヤリしている。 またまた昼寝をしたくなる。

トトロが笑っているような顔に見えない?

▼奥村地区はバスで毎日通過していたのに気づかなかったが、思いがけないところに脇道があった。その入り口から見上げるとナサニエル・ ホーソンの『巌の顔』に出て来る様な人の顔を想像させるゴツゴツした岩肌が見える。あんな高い所へはどうやって登るのだろう。登れないのかな?と考えているうちに、もう喉が渇いた。ゴクゴクゴク。 


▼偶然停まった場所に標識があって、「咸臨丸」の文字が見える。そうそう、父島には、幕末に活躍した咸臨丸が寄港していたし、ペリーも上陸している。林の中に入っていくと、咸臨丸の船員のお墓があった。 


あの茶色の所に行くことになるとは思いも寄らなかった
▼道は少し坂になるが勾配はキツくない。自動車整備工場を右に見たのが最後で、後は葛折りの山道が延々と続く。何度も引き返すべきか、走り続けるべきかを考える。その都度、ゴクゴク。色とりどりの緑が眼前に広がる。中腹の方に赤茶けた一帯があるのは、道路整備の後か。あんな所までは行けと言われても行けんわな・・・とブツクサ言いながらペダルを漕ぐ。アダンの木が大きな影を作っているところに腰を下ろし、麦茶を飲みながら、これ以上進むか戻るか再び考える。もう2度とないチャンスなのだからと記者時代の「もうチョット頑張る」主義が頭をもたげて来る。 
茶色の道の先から眺めた二見港

島の東側  東島

島の東側 兄島 

▼途中すれ違った車と追い抜いた車がそれぞれ2台ずつ。ほぼ頂上に近い所にある「長崎展望台」に到達した。眼下に群青色をした海が広がっている。見た途端、「良くぞここまで来たよな」と自分で自分を褒める。いつも誰からも褒められたことがないので、自分で自分を褒める習性が・・・トホホ。「よし!まだ上に行けば違う景色に会えるかもしれない」と再び意を決して、 一番軽い踏み込みにしてある“赤べこ号”に跨る。ここからも更にキツかったが 、頂上はすぐそこの様な気になって、喘ぎながらも漕ぎ続けると<長崎トンネル>が現われた。 


国立天文台

▼こうして行けども行けども頂点に達しないまま道は下り坂に変わっていった。あれれれ、ナンジャこれ。今度は<旭平展望台>だ。地図を見ると島の北部辺りでヘロヘロやっている。しかも満杯だった“赤べこ号”の充電量が、60にまで落ちて来た。下りが続く時は電源をOFFにして節電を心がける。するとまもなくこんもりした森の中に白く大きなロケットのような建物が見えて来た。入り口に<国立天文台VERA小笠原観測局>の看板が。デカイ。我々のイメージする望遠鏡とは違いすぎて、外観だけでは何なのかさっぱり見当がつかない。車のそばにいた職員風の人に「ここに住んでおられるんですか?」と訊くと、違うという。忙しそうなので引き上げる。 (つづく)

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