故郷 最後の日 /  557

 故郷での3泊4日は、酒浸りだった。一日の基本パターンは、朝8時半過ぎに「三川食堂」で食事、昼午後1時半に「杵築ラーメン」でネギ・キクラゲ・もやしラーメン、夜日没と同時に「いち屋」にて新鮮な地魚の刺身、塩焼き、貝の味噌汁でハイボール、これに鰺フライや唐揚げも有り。

  左上のビルが寮

   三川食堂は、杵築で中学校時代からの親友A部長夫が経営している。というのも長夫は自動車学校も経営、そこに集う都会からの免許合宿希望者に、マンションを寮として提供し、その寮のすぐ下で食堂を運営している訳だ。つまり自動車免許を取りに来た都会の若者が、宿泊先や食事に不自由しないように三位一体のシステムを構築したという訳だ。

    だから学校が始まる前の朝食時間は、生徒で溢れている。「鯖の煮付け定食」「焼き魚定食」など500円が目につくが、何の定食か忘れたけれど350円のもあった。170円出すと目の前で卵焼きを焼いてくれる。私はいつも「甘めに」と頼んでいる。

  昼の杵築ラーメンは、やはり長夫が教えてくれた店だ。流石に経営者ではない。昔、私たちが高校生の頃、市内の富坂の途中に「玉川食堂」というちゃんぽんとラーメンと皿うどんが、抜群に美味しい店があった。豚骨味なのだが、何か隠し味があってマイルドになっている。同じ味のラーメンを日本中で探して廻るが、玉川のラーメンのスープ、いやラーメンそのものを超える味にいまだ出会っていない。

  

 特捜部長をしたI十嵐紀男さんが、大分地検の検事正で赴任するとき、玉川ラーメンを紹介したところ、奥さんと二人で訪れて、大満足したと手紙をもらったことがある。あの味に些か近い感じがするのが、杵築ラーメンだ。私的には卵の黄身をスープに加えて熱くしてかき混ぜ、生臭さを消したら、あの玉川の究極のスープに近づくのでは?と密かに思っているのだが、帰郷したときしか通わないので、まだそんな意見は言えない。でも十分美味しいよ。

いち屋では、刺身や唐揚げ、サラダなどのつまみでハイボールを飲んだ後、仕上げに梅干しと貝の味噌汁、焼き魚でご飯

    いち屋はもう紹介済みだが、毎晩行くとじゅっさん(故人)の奥さんさだ子さんに気があるのではと思われると拙いと思い、1日だけ休んだ。実は、A-coopにある鮮魚コーナーに地元産のカワハギ、コチ、チヌ、天然の鯛が並んでいて、ついつい買ってしまったのだ。皿と箸とミツカンポン酢、紅葉おろしも忘れずに。

    ホテルいな里(旧杵築市内で唯一の宿泊所)の8階には天然温泉の中浴場が有り、窓を開くと杵築城の天守閣を眺めることが出来る。ここでのんびり湯に浸かり、浴衣姿でサントリーの缶入り「濃いめハイボール」とかぼす缶酎ハイを5本飲んで爆睡。但し全然安上がりではない。いち屋の方が安くつくくらいだから、一人暮らしというのは結構不経済だと知る。まぁ美味いモノはそんなもんだろう。

  法事の後の飲み会は、昼から生ビール3杯、ハイボール6,7杯いやもっとかも、飲み過ぎて途中ウーロン茶を何杯か飲んだくらいだから。午後5時前にホテルに戻って2時間ほど爆睡した後、さぁーと風呂に入って目が覚めたところで、また「いち屋」では・・・と思いながら店の方に歩いて行くと「うどん/そば 杵屋本店」と看板が見えた。杵築の夜は早く、午後8時を過ぎるとほとんどの店は閉まってしまう。

 午後8時半直前だが顔を入れると「どうぞ」とご主人と奥さんの声。「何時までですか?」「8時半ですけど良いですよ」と優しい。目の前に大きな稲荷寿司が並んでいる。杵屋特製ミックスうどんとお稲荷さん1個を注文。客が来てから茹でるので、20分近く待つ。確かに名前の通り、肉+山かけ+きつね+エビ天が入ったミックスうどんだった。

   私のような欲張りジジイには、願ったり叶ったりの超満足うどんで、しかもお汁がこれまた辛すぎず、甘すぎず、丁度好い塩梅で美味かった。今度帰ったら最初からここに来ようと決意する。

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