チンギス紀と雄ちゃん忌 / 585

    待望の『小説すばる』5月号が届いた。先週近所の石堂書店で立ち読みをしていたら、例によって”呼ぶ“ものがある。何だろうと思って書棚を見回すと、平台に立てて並べられた月刊誌の列の中からだ。「おお『小説すばる』6月号じゃないか。どうしたどうした?」と訊ねるようにページを開き、目次を見ると表題に後光が射している。あっ!北方謙三大先生の新連載「チンギス紀」が掲載されている。しかし第2回とあるではないか。これはこれでゲットした上で、5月号を注文。早く来ないかなぁとその時は思っていたが、すっかり忘れていた。きのう、隣の八百屋に買い出しに出たとき、店主から「入りましたよ〜すばる」と声をかけられた。雨の日はベッドでゴロリとしながら読書が一番だ。八百屋で買ったアメリカンチェリーを一度に沢山口に含み、むしゃむしゃ食べながら読む。出したタネが皿からときどきこぼれ落ちる。娘に叱られるな。まぁいいじゃないか。

 

    北方謙三大先生と宮城谷昌光大先生は、坪内祐三大先生と並んで、現役の中では私が全作品を読む作家だ。特に北方大先生は、本になるのが待てずに雑誌のうちから読みたいと思う。何冊か読み続けていると書籍になるが、それはそれで買って再度読む。とにかく北方ワールドが大好きなのだ。切っ掛けは『破軍の星』だった。これで古典の『太平記』をはじめとする南北朝ものにはまった。北方ものでは、以後『楊家荘』『血涙』『三国志』『水滸伝』『楊令伝』『岳飛伝』・・・と書き出したらキリがないほど読み尽くした。悠久の世界に誘い込んでくれる、まさにベッドの友でもある。いつも一気に読んだ後、「あぁもう終わったのか」と恋人との逢瀬の後の感慨と似ている。今回も13歳のテムジンが旅を続けるところから始まっていてワクワクして読み進めている。

 

    そんな『小説すばる』をバッグに入れて、横浜から東海道線で東京—御茶ノ水といつもの「イカセンター」にやってきた。金曜日とあって超満員。月ちゃんに加えて玲奈(文字は分かりません)ちゃん、美湊(みかな)ちゃんとニューフェースもてんてこ舞いの様子。今夜は、親友の吉崎雄(一)ちゃんの長女麻有子ちゃんと雄ちゃんを偲びながら飲む。雄ちゃんは、去年の4月10日に亡くなり、その法要のため、郷里杵築に帰った話は4月9日前後にすでに書いた。彼女とは仙台の通夜で会ったのが初めてで、その後法要、そして今回が3度目、初飲み会となる。大相撲を見に行った帰りと言うことで、大きな紙袋にお土産を沢山詰め込んで現れた。彼女はビール、私は北雪で乾杯。今日の目玉はヤリイカで、刺身にした後も生きていて、足が動くのを撮影したが、動画じゃないんだから意味がなかった。ヤリイカ

動くゲソ

ニューフェイスのレイナちゃん  冨谷さんと

    彼女の話は、父親と娘の仲むつまじい思い出ばかりで、「糖尿病なのに私をダシに連れ出しては日本酒を飲みに行って」「お母さんはおしゃれな店が好きだけど、お父さんは居酒屋のようなところが好きだった」など、いくら竹馬の友とは言え、生活態度が余りにも私と一緒なので何度も笑った。父娘のやり取りを聞いていると、その情景が目に浮かんできて、若き日の雄ちゃんの顔やしゃべり方が目の前の麻有ちゃんと重なった。

 「もも」にて

    いつものように赤坂の「もゝ」にも顔を出した。珍しくお客さんが一人で、こんなことも、あるんかいねといった感じ。和枝さんに縷々彼女の父親との関係を説明するけれど、会ったことがないんじゃ全く酔っ払いの戯言で、申し訳ないことをした。その後に来たA日のS君にも、阿呆な私はまた同じような説明してしまう。途中で気がついて自己嫌悪に陥ったところで、「最終電車の23時59分に間に合わなければ・・・」と言いながらも記念撮影は忘れず。彼女とは千代田線の表参道で別れた。若いのに、電車が動き出すまで見送ってくれた。社会部記者と同じだとふと思った。私は明治神宮前から副都心線の武蔵小杉行きに、さらに遅延のため10分ほど待たされて横浜行きの最終電車に乗りかえた。金曜日だったので超満員。帰り着いたときは午前1時を回っていたが、珍しくラーメンや蕎麦を食べずご帰還。この夜も愉しい好い飲み会だった。

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