卒業生が少ない東京経済大学の、しかもNHKの、加えてノンフィクション執筆の、と3つも重なる後輩は、この世の中で、F谷敏郎さんしかいない。その彼が書いた『評伝 宮田輝』の出版を祝って、新宿荒木町の『さわ野』で飲んだ。
彼の本についてはこのブログでも、連休前に「おすすめ本」として案内したが、その後著名な芸能評論家のW辺保氏が毎日新聞の書評欄に、それはそれは実に好い書評を書いていた。この本の持ち味をうまく引き出し、勘所をえぐった内容だった。
それとは別に、この本には宮田輝氏に学ぶ、人の付き合い方、接し方、取材の手法、インタビューの心得、番組の準備、進め方などなど、アナウンサーでなくても記者やディレクターをはじめメディアの「現場」に立つものが知っておくべき数々の金言が盛り込まれている。
この本を読んでいくうちにそれに気づいた私は、重要な箇所に10 Bの鉛筆でラインや◯印をつけた。その上で、来春、新聞社か通信社の記者になる予定の末の娘に、「お父さんが、50年前、いや40年前にこの本に巡り合っていれば、少しは真っ当な記者になれていたかもしれないので、ぜひ読んでおくといい」と言って手渡した。
大学2年生まで国連職員志望だった彼女の本棚には、今や私がイチ押しの本田靖春選集を始め、原寿雄さんの数々の作品などがずらりと並ぶ。せっせと読んではその感想を聞かせてくれるので、この本もいずれ血となり肉となり肥やしとなるだろう。
このように、F谷さんの本が面白く、役に立つ内容満載なのは、宮田輝氏が培った様々な「技」の記録を、丸ごと資料として手に入れたところにあると思う。そんな執筆の裏話を聞きながら飲む「北雪」は美味かった。
帰りに赤坂の『もも』に寄ったら満員御礼、札止めのところを無理に入れてもらった。そこで「おいでおいで」をしてくれたのが、NHKにもよく出る外交評論家のW部恒雄さんだった。彼の父は衆議院副議長の故・恒三さんで、宮田輝氏とはとても深い縁があったというので、この本を紹介したら、目の前で、Amazonで購入してくれた。1冊売上に貢献できてとっても嬉しい。