生き方を変える読書 / 516

繰り返し読んでも面白い本がある。「また読んでるの」と家人を呆れさせる本は、藤沢周平さんの一群の作品で、全集はもちろん初出の単行本もほとんど本棚に並んでいる。もっと言えば全集は2巻ずつだ。「韋編三絶」という言葉を体感したのはこの全集を読み始めてからだ。藤沢作品との出会いは、衝撃的?だった。既に書いたかも知れないが、当時住んでいた清瀬駅近くの社宅から警視庁に向かう途中、自転車屋さんの横のゴミ捨場に、ビニールひもで縛った単行本の藤沢作品が6〜7冊ずつ2つか3つ束で捨てられているのが目に入った。ふと鹿児島時代、南日本新聞の県警キャップだったH本勝紘さんが、春苑堂書店の包装紙でカバーした『暗殺の年輪』を読んでいたのを思い出し、「俺も読んでみよう」と、駅への道半ばまで来ていたのに、わざわざそれをぶら下げて持ち帰った。読み始めたのは『よろず屋平四郎活人剣』で、面白くて面白くて、いったん警視庁に上がったものの、ずーと読み続けて仕事にならなかった。翌日からは藤沢作品を読みたいがために「体調が悪い」と仮病を使って仕事を休んだ記憶がある。一番好きな作品は、『海鳴り』で、初出が1994年だから、もし1990年までに読んでいれば私の人生も大きく変わっていたと思う。その後、今のような生き方を選んだのも、この本に背中を押されたからだ。

  『海鳴り』の影響だけではないが、恋愛に他人が介入することに凄く嫌悪感を覚える。そもそも恋愛に、倫も不倫も何もないという考え方で、テレビ朝日のT中萌ちゃんが誰とくっつこうと別れようと勝手じゃないか。「どこが悪いんじゃイ!早く復帰させろ!!」と私は怒っている。ベッキーさん叩きも鼻白んだ。世の中は男と女、4つの組み合わせ(男と女、男と男、女と女、両方)しかないのだから。しかし人間というのは下世話なもので、ついつい他人の恋愛に介入したがる。ここに「倫理」と「欲望」の葛藤が登場する。一度しかない人生をどう生きるか。平たく言えば「(会社や世間様への)義理と人情(恋愛感情)を秤にかけりゃ・・・」その先の選択は、他人様にとやかく言われる筋合いではないというのが私のスタンスだ。

  不倫叩きには「嫉妬」が介在しているのでは、とついつい穿った見方をしてしまう。週刊誌、テレビがせっせと取り上げるのは、嫉妬する読者への情報提供で、「私も(本当は)ああいう風に生きてみたい」という羨む気持ちと「私だったらやらないわ、不潔!」という自制から来る反発、さらに諸々の覗き見趣味につけ込んでいるのだと疑っている。他人への介入で有り、監視で有り、秩序形成では。それにしても、いつから日本人は「聖職者」ばかりになったのだろうか。

  23日は午前10時半前から夕方6時前まで、途中近所に親子どんぶりを食べに行ったくらいで、3月3日発売予定の『電子書籍版 トイレ探検隊がゆく!』の校正を終えた。今朝(24日)は4時過ぎから大学の『教育年報』に原稿を書いて提出、これで取りあえず他社対応は全て終了した。3月退職まであと1ヶ月。4月になったら「キンドルを持て 旅に出よ」だな。

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