介護の世界を知らない人でも、吉本隆明さんとの対談集などで、名前を聞いたことがあるかと思うけれど、介護を始めるとこの人の存在は大きくなる一方だ。
介護の技術的なことで、彼の著作に学ぶことが多いのは確かだが、その一方で介護の世界から導き出した独自の思考に共鳴することが少なくない。これまでに2回セミナーに参加した。1回目は全くの技術論だったが、それでも介護される側を徹底的に意識しながら行う介護術についての解説と実践が参考になった。
2回目はレビ・ストロースの『野生の思考』をベースにした認知症の老人との向き合い方についての考察だった。これは面白かった。文化人類学的発想からの「思考」を、認知症に対する視点に置き換えて「異端」ではなくて「異文化」と捉えると、向き合い方が全く異なってくることを示唆していた。
三好さんは、広島の修道中学、高校の出身で、卒業式を間近に控えてベトナム反戦デモで逮捕された同級生の支援活動をして、退学になったという強者で、その辺のことは『介護のススメ』(ちくまプリマー新書)や雑誌『We』(241号)に詳しく書かれている。
3回目のこの日は、マルクスの『経済学哲学草稿』やシモーヌ・ヴェイユの『労働と人生についての省察』を紹介しながら、それを介護の世界に準えながら自分の体験を交えて語った。
その後近所のインド料理の店で懇親会となり、10人以上の老若男女が集まった。学生運動の時代を知っているのは、三好さんや彼の高校時代からの親友でIT専門家のS浜さんたち数人だったが、我々の話にオランダから来たという初老の婦人が、ことのほか喜んで質問してを浴びせるので、 S浜さんが刑務所時代の体験談を披露して爆笑を誘い、大いに盛り上がった。