午前1時過ぎから読み始めた『Black Box』(B藝春秋)を一度も休むこと無く、お茶すら飲むこともなく、一気に読み終えた。すでに「週刊S潮」の記事で知っていると思っていたが、微に入り細を穿つ内容に衝撃を受けた。
▼読み進んでいくうちに、Y口敬之なる準強姦容疑者だった男の卑劣さに、呆れてモノが言えないと言うより、これほど卑怯な、人間のクズはいないと強く憤りを覚えた。娘を持つ父親としてこんな奴を許してはいけないと本当に腹が立った。この本は、是非全国の女性に買って読んで欲しい‼️早速娘にも読ませることにした。
▼この手の本は、冷静に両者の言い分を聞いて判断する、なんて間の抜けた寝言のようなことを言ってはいけない。読めば分かる真実相当性、迫真をつく情況分析からも首肯できる内容だと確信している。
▼Y口元準強姦容疑者は、テレビで何度か見たことがある以外全く面識の無い記者だが、恥ずかしくなるというか、気持ちが悪くなるような政権べったりの解説と政権のスポークスマンを任じているような語り口に辟易したものだ。
▼しかも悲しいことに、このY口元準強姦容疑者が犯行当時Tビーエスのワシントン支局長だったと言う事実に、品性の無い私が言うのもヘンだが、「記者の品性の欠片もない、ジャーナリストも地に落ちたもんだ」と重苦しい気持ちになった。立場を利用してあわよくば「上手いことやってやろう」という魂胆が露骨に見えてくる。実に計画的な犯行の臭いがする理不尽この上ない腐れきった存在だ。
▼書評を頼まれたとき以外、この手の本で付箋を貼りながら読み進めることは珍しい。それほど驚かされることの連続であった。それはY口元準強姦容疑者の犯行の手口は言うに及ばず、その後のノラリクラリした政府や官僚の国会答弁のような「言質を取られまい」とするメールの返答もそうだ。
▼彼の対応の不誠実さは、過去にも同様のことをして逃げ切った経験が何度もあるのではないかと想像させた。このことは、後半に出て来るK検事が <こういうことに手馴れている。他にもやっているのではないかと思います> の発言からも、可能性は大きいと思わせた。
▼さてこの本で特に付箋を貼った多くは、著者のI藤詩織さんが、警察(唯一真っ当なA刑事を除く)、検察、無理解な弁護士(後に真っ当な弁護士と巡り会うのだが)、それらの背後にある国家権力等々とのやり取りに、疲弊しながらも弱りきった心身に鞭打つように、友人達のアシストもあって闘い続け週刊誌報道にまで漕ぎ着けたことにある。
▼さらに詩織さんが、ジャーナリストとしての問題意識や現状認識、分析が、非常に高いレベルにあることを終始認識させられた。思い出したくも無い過去を、<沈黙は平穏をもたらさない>と、克明に振り返り、後付け取材のように証言を収集して回る姿は、同世代の記者達を完全に凌駕している。
▼彼女のもう一つの凄さは、ネット上で「左翼だ」「売名だ」「民進党だ」「在日だ」という嘘の情報がガンガン流されたことに対して、いずれも否定した上で <私が仮に左翼であっても、民進党の議員であっても、韓国籍であっても、性暴力を受けて良い対象にはならない。そして、そのことで非難の対象になるべきではない。私が誰であろうとも、起こった事実に変わりはないのだ>と一刀両断しているところだ。メリット、デメリットばかり気にする人達にも、「事の本質を見誤るな!」と匕首を突きつけているようで小気味いい。
▼週刊誌や夕刊誌を除けば、政権に媚び売り、腰の引けた報道しかしない日本のメディアなんかサッサと見切りをつけて、ドキュメンタリスト、ルポライター、報道カメラマンとして世界に羽ばたいて欲しい。いやそれは既に始動しているようだ。健闘を祈る。