弓立社の10年 御礼 (1403)

11月11日は、有限会社弓立社を引き継ぎ新たなスタートを切って10年目だった。先代のM下和夫さんに声をかけられ即決したものの、中々大変な10年だった。50歳になる前にすでに関連会社には行かないと決めてあったし、「67歳までにやってみたいことは全部やる」と退職後の日々を思い描いていた。その一つが出版社か古本屋だった。10年で10冊が目標だったが、3冊の自費出版を請け負ったので実質7冊止まりだった。

それにしてもこれほどの金食い虫の商売はない。おそらく注ぎ込んだ資金があれば田舎の古民家を改築して、釣り三昧の方が楽だったに決まっている。しかしそんな生き方を選ぶくらいなら、あれもやりたいこれにも挑戦したいという発想は出てこない。そんな生き方と無縁のところで過ごして来た。これで満足、満足というのが偽らざる心境だ。振り返れば、最初に出した『原寿雄自撰 デスク日記』は完売。さらに『変貌する日本の安全保障』と『おひとりさまで逝こう』が好調で、会社の維持存続に貢献してくれている。

前者は安倍政権以来の軍拡路線に危惧する読者層が、ゆっくりだが着実に購読してくれている。後者は、思いがけずと言っては失礼だが、それは著者のM国浩晃さんの人柄、誠心誠意の性格に負うところが大きいのだが、今年1月に発売されたU野千鶴子さんの『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)の中で、この本を取り上げてくれたことから俄かに注目された。

それにしても10年どうにかこうにかやってこれたのは、最初に運転資金を提供してくれた学生運動つながりの故柳喜之さん、事務所の住所を貸してくれた前出の著者でもあり、「人生まるごと支援」のM国浩晃さん、にんげん出版のK林健二、T井みゆき夫妻、さらに30年来の友人のF木啓孝兄、そしてNHK時代からの親しい友人のT橋宗和さんや後輩のH木雅己君、ここ10年昵懇のM森直昭さん、そのほか税理士事務所のS井いづみ兄妹、現在のO浩志さん、さらには論創社のM下紀夫社長、そして執筆陣・・・と挙げ出したきりがない。つまりこんな弱小出版社ながら数多の人々が陰日向なく支援してくれたお陰、まさに賜物だ。感謝の気持ちでいっぱいだ。ありがとうございます。

コロナ禍で何もかも停滞した2年だった。さてこれからどうするのか。美空ひばりの「関東春雨傘」ではないが、

<抜けるもんな抜いてみな、斬れるものなら斬ってみな さあ さあ さあ さあ さあ さあ・・・>

と威勢の良い啖呵を切ってみたいものだ。

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