小笠原で最も重要なことは、「買い出し」である。おがさわら丸は、通常6日置きにしか入港しないので、本土から大量の物資をコンテに積んで運んでくる。これを島民2500人余りと観光客700人余りとで分け合うことになる。つまり大雑把に言えば、3000人余りの口を1航海で賄う感じだ。これを見ずしてはルポライターの名折れとばかり、コンテナから下ろした頃を見計らって、午後4時10分のバスで繁華街の大村地区に出かけた。
▼小笠原村営バスは、ざっと20人も乗ればいっぱいのミニバスだが、1時間に1本の間隔で村内を回ってくる。しかも繁華街以外は、どこで手を挙げても停まってくれる。片道どこまで乗っても200円、とは言え最大の距離でも20分だから、推して知るべし。ただし500円の割引券を買うと、1日何度乗っても自由というのが、観光客に配慮している。
父島で初めて見た信号機(写真の右側上部)p
▼二見港の真ん前にある青灯台バス停で降りると、目の前左側に午前中訪れた「小笠原生協」があるが、午後は「スーパーで小祝」にした。立錐の余地もない。痴漢が出てもおかしくないほど密集している。こういう場合は買い物慣れしている私の得意の手を使うしか無い。まず買い物カゴを持っていきなり行列の最後尾に並ぶ。当たり前だが。あとは牛歩戦術同様、ジリジリ10センチずつ移動するたびに、自分の周辺に今夜と明日朝の食べ物で必要なものをカゴに入れていく。やはりお茶が欲しいのだが、ガッキー(新垣結衣ちゃんと)の「十六茶」がない‼︎仕方がないので、爽健美茶2Lを2本購入した。
▼そう言えば午前中生協で「フルーツグラノーラ」という、娘が一時期ハマっていた乾燥穀物とフルーツの混合品を買っておいたんだ。それなら牛乳がいる。ニンニクのしょうゆ漬けもある。梅干しが見えない。仕方がないのでしそ味ニンニクに変更。あれ深山のキムチも売っている。全国区だな「スーパー小祝」は。イイね。京都の豆腐もカツオの酒盗も、なめ茸の瓶詰も、なんや酒のつまみばっかりやん。いえいえ今日だけはサントリーのオールフリーで、何ヶ月ぶり間の断酒だ。ついでに焼きそばも。これもツマミになるもんね。かくして両手いっぱいにビニール袋をぶら下げて、最終便の1本前の17時20分青灯台前のバスに乗った。
▼夜は涼しい。午後8時過ぎ、食堂にある大型冷蔵庫の私の棚から食材を出して皿に並べる、のが面倒だったので、一皿に全部盛った。酒はない。オールフリーのロング缶が今夜の友だちだ。食事が終わっても酒じゃないのですぐに眠くならない。夜は更けていく。Kindledで桜木紫乃の『ワン・モア』を読み始めた。天井で「キューキュー」と小動物の鳴き声がする。イタチか?小笠原の固有種か?