小笠原 島便り2017 ④ 小浜海岸 / 606

シャンティバンガローから1番近い人気スポットは小浜海岸で、父島ではNO3の観光名所だと言う。昼のラム酒が効いたのか、バンガローに戻ると扇風機の風に打たれて好い気分で爆睡してしまった。気がつくと午後 4時を回っている。まだ陽は高い。ここは気楽な宿で、通信施設さえ充実してくれれば、1年中住んでも良さげなところだ。ブログを書いてもアップ出来ないのが特に難点で、原稿を書いておいて、街に出た時に一気に電話もパソコンも作動させるしかない。 

▼午後5時40分、山に陽が落ちたのを見計らって小港海岸に向かって歩き始める。F沢夫人の話だと15分くらいだと云うので、何とかなるだろう。と思いきや30メートルほど歩いて脚が急に痛くなった。忘れていたわけではないが、恐怖の脊柱管狭窄症だ。「痛て、て、て・・・」を繰り返し、途中立ち止まること7回。夕陽を見にいくのにこんなに苦労するとは。大きなガジュマル?(南の大木は、みんなガジュマルに見える)の下に村営バスの終点がある。私はここから戻って来たバスに乗っていつも繁華街に出かけているのだ。

▼こんもり茂った森を抜けると休憩所が見えて来た。すぐ先は海原が広がっている。ヤドカリが至る所で右往左往している。「プライベートビーチやん」嬉しくなる。誰もいないのだ。風が爽やかに頬を凪いで行く。大きな流木に腰を下ろし、夕陽をぼんやり眺めている自分に「 いやぁ来て好かったな」と一人語りかける。別に島の名所や観光地巡りをしたいわけではないのだ。ちょうど200年ほど前にソローが池のそばのバンガローに2年ほど暮らしたように、少し気分を味わいたかったのだ。 

▼帰えりは午後6時半の最終バスに乗った。運転手さんは今日3回目の同じ人だ。日曜日は1人で終日走るが、平日は午前と午後で運転手さんが代わるという。相手も覚えていてくれて、乗る時に「シャンティバンガローですね」と声をかけてくれた。 

▼シャワーを浴びるとすぐに晩飯だ。「午後7時から8時ぐらいまでは羽アリが飛び交うので電灯は消して下さい」とF沢さんに言われていたので、宿泊客の3部屋とも真っ暗。食堂の中で出来合いのものと言うよりツマミだけで飲んでいると、ここに長期滞在しているS本さんが、「外で飲みましょう、そっちの方が涼しいですよ」と教えてくれたので、庭にある大きなテーブルに移動。新築工事に来ている佐賀県出身のF川さんは「お酒飲めないんで」と離れたところでタバコを吸っている。よっぽど「1本100円で頂戴」と言おうと思ったが、ここは東京都内であってもタバコは貴重だと思い諦める。折角、F(木啓孝)ちゃんや(T橋)宗ちゃんたちのタバコ攻勢から逃れられたと云うのに、ここで誘惑に負けては・・・。 


▼Sさんは40代後半で、アメリカ留学中は、ソローの『森の生活』の舞台となったマサチューセッツ州コンコードにあるウォールデン池まで遊びに行ったという。「えっ『森の生活』!」ホンマかいな。父島に永住したいが、アパートがないので、このバンガローに長期滞在しているという。「長期だと割安ですよ」と教えてくれたが、1ヶ月じゃね〜。 

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