「歳を取ったな」と痛感するのは、読書の時だ。新聞はデジタル版に切り替えたので、活字も写真も鮮明で、大きさも自由自在だ。ところが本を読むのには苦労している。ここ2年日に日に読みづらくなっている。特に痛感したのは、最近買った3冊の新書(『地図から消される街』『ルポ 老人地獄』『新・日本の階級社会』を読んでいる時だった。あまりに活字が小さすぎて肩がこる。目がショボショボする。これには参った。
こんなこともあった。今をときめく石井妙子さんの作品で『日本の天井』というのがある。それを食い意地のはっている私は、『日本の天丼』と読み間違えた。Amazonに注文する段になって気がついた。これには書斎で一人笑い転げた。
しかもずーと前から読み続けている『四千万歩の男』ともなると文庫本だけに、絶望的な気持ちになる。「あ〜イライラする」と投げ出したくなるが、私が愛してやまない3大作家、いえいえ尊敬する井上ひさし大先生のご著作を乱暴に扱うわけにはいかない。途方にくれる。
<活字に漢字が多い、しかも詰んだ文字の羅列は辛い 『四千万歩の男」から>
先達たちも老化と共に読書には苦労している。かの藤沢周平大先生は、大きな虫眼鏡を使っておられる写真を見たことがある。吉本隆明大先生に至っては、パソコン画面のような大きな拡大鏡を使っている。「老いの超えかた」を始め、氏が登場するいくつかの雑誌で見たことがある。当時は「糖尿病だから視力が減退しておられるんだな」と同情する程度で、それほど気にも留めていなかった。しかし今、吉本さんの歳になって他人事ではなくなった。この間、拡大鏡、拡大メガネ、携帯用拡大下敷きなどを使ってきたが読み辛いのだ。実は思い切って電子化にすれば問題解決なのだ。
<『老いの超え方』(朝日新聞者)からの引用>